日本はドローンの開発こそ他国に比べて決して早くはありませんでしたが、農業への導入など民間利用については積極的でした。1985年、ヤマハ発動機が20kgの農薬を登載可能な農薬散布用無人ヘリコプター「R-50(L09)」を世界に先駆けて発表。1990年には格段に操作性を向上し、農業用無人ヘリコプターとして一躍人気を博した「RMAX」が発売されました。現在はもちろんヤマハ発動機以外のメーカーからも農業用ドローンは多数発売されており、世界中で利用されていますが、現在でも日本のドローンは高いシェアを誇っています。
農業へのドローンの導入は、広大な田んぼや畑への農薬散布から始まりました。田畑は面積が広くなると、効率的に作物を作って大量に収穫することが可能ですが、そこで困るのが農薬散布です。人力で膜にしても、何ヘクタールもの畑にまこうと思うと、背中に農薬を背負って歩きながらまくわけにはいきません。農薬をまくだけで何日も何週間もかかってしまいます。かといって、車両などは田畑の内部までは入り込めませんから、手の届かないところへの散布は農家にとっても難しい問題でした。そこで利用されていたのが、有人ヘリコプターによる上空からの農薬散布です。しかし、このヘリコプターによる散布は、人体への影響が心配される農薬が非常に広範囲に飛散する心配があることから、住民による反対を受けることが多く、次第に使用される数も少なくなっていました。そこで登場したのがドローンです。
農業用のドローンは、私たちがイメージするクワッドコプターではなく、ユウジンヘリコプターをそのまま小型にしたようなもので、無人と言っても20L前後の農薬を登載して飛ぶのですから、それほど小さなものではありません。軽トラの荷台にようやく載るくらいのサイズで、パワーもあります。有人ヘリコプターに比べると、かなり低い位置から散布ができるので、周囲への飛散量が抑えられるのもメリットでしょう。
農業におけるドローンの活躍の場は、農薬散布だけではありません。農地の上空を飛んで画像などのデータを取得し農業のIT化の鍵となっているのがドローンなのです。シンプルな使い方としては、農作物を上空から映像でチェックして生育状態に異常がないかを確認します。さらに、最新の農業ではドローンに視覚センサーや赤外線センサーをはじめとする数々の複雑なセンサーを搭載し、植物の高さや、雑草の有無なども検出し、徹底した生産管理が行われます。特に、海外ではこうして農業の効率化を求める動きが大きく、データ管理や解析を行うサービスを提供する企業もあります。確かに大規模農場の多い海外では、管理体制を強化して生産性を上げることで格段に収穫量や収穫物の質を上げることが可能になるでしょう。日本の農家は海外ほどの規模で作付けを行うところが少ないので、IT管理を行っているところはまだ少数ですが今後は増えていくことが予想されます。これからの農業は、私たちがイメージするものとはずいぶん様変わりしていくはずであり、ドローンはそのカギを握っていると言えるのです。